スカイ・ステージの番組『マイスターの教え』が「リターンズ」となって今年再スタートしてから、今月で早くも第7回となりました。
第7回目は2022年に上演された花組の永久輝せあ主演の『冬霞の巴里』。
スカイ・ステージで先月から放送されていて、私も観たばかりでしたので、この番組をとても興味深く見ました。
今回のマイスターは夏美ようさん、そしてゲストはこの作品でアナーキストのヴァランタン役を演じていたほのかちゃん(聖乃あすか)でした。
マイスターの教え リターンズ#7 花組『冬霞の巴里』「夏美よう/聖乃あすか」
『冬霞の巴里』は2019年に『龍の宮物語』でデビューした指田珠子先生の第2作目の作品です。
デビュー作の『龍の宮物語』が大評判となり、私も大好きな作品でしたので、次の『冬霞の巴里』もすごく期待して楽しみにしていたんですが、残念ながら劇場でもライブ配信でも観られず…
なので、スカイ・ステージで放送されるのを心待ちにしていました。
実際に期待通りの作品でした。
指田先生のあの独特の世界観、『龍の宮物語』とは国も背景も登場人物の性格も全く違うけれど、両方の作品に通じる美しさと残酷さと切なさを感じました。
この『冬霞の巴里』も大好きな作品になりました。
その作品についてマイスターの専科のはっちさん(夏美よう)と、出演者のほのかちゃん(聖乃あすか)が語るというので、番組が発表になった時から楽しみにしていました。
マイスター夏美ようの考察
はっちさん(夏美よう)は指田先生の『龍の宮物語』が大好きだったので、先生の第2弾のこの作品を楽しみにしていたそうです。
そういえば『龍の宮物語』の『マイスターの教え リターンズ』のマイスターもはっちさんでした。
観る前は題名から切ない恋人達のラブロマンスかなと思っていたそう。
で、始まった瞬間にグイグイ作品の世界観に引き込まれてしまったそうです。
ラブロマンスではなくて復讐劇でしたね〜(笑)
「生きているのに死んだようにしがらみに囚われている人間たちと、能動的な亡者たちとの対比がすごく立体感のある世界で、ハッとしました」
という感想でした。
登場人物の復習と愛がテーマで、「憎しみと狂気の狭間で苦悩する登場人物」が描かれているという考察でした。
聖乃あすかの役についての思い
この作品でほのかちゃん(聖乃あすか)が演じたのは、主人公のオクターヴ(永久輝せあ)と同じ下宿に住むアナーキストのヴァランタンという男です。
年齢も職業も不詳で、最初は何を考えているのかわからないという役。
最後の最後にオクターヴの叔父ギョームに恨みを持っていて復讐するのが目的でオクターヴに近づいていったということがわかる訳ですが、ほのかちゃんは役をつかむのがものすごく難しかったと話していました。
それだけにこの作品に出会ったことで舞台人としての意識が変わり、自分にとってターニングポイントになった作品だということでした。
壁にぶち当たった役
ほのかちゃんはこのヴァランタンという役をつかむのにかなり時間がかかったそうです。
ほぼ初めてとなるダークな役で、復讐という目的があるのにそれを表に出さずまるで正体が感じられない役でしたから、ほのかちゃんでなくても難しかったと思います。
役がつかめなさ過ぎて、周りがどんどん役を自分のものにしていってるのを見て置いていかれているような気がしていたそうです。
それほど壁にぶち当たった役だったようです。
主演の永久輝せあからのアドバイス
この作品をやるまではひとこちゃん(永久輝せあ)とはあまり深くお芝居をしたことがなかったそうです。
でもこの作品をきっかけに遠慮なくぶつかれるようになって、それがオクターヴとヴァランタンとの関係性にはよかったと思うって。
「自分を受け入れてくれるひとこさんの大きさが助けになった」
ということを言っていました。
ほのかちゃんが役がつかめなくて周りに置いていかれていると感じていた時に
「今はちょっともがいているかもしれないけど、この役がほのかを成長させてくれるから。焦らなくていいんだよ」
というアドバイスをくれたんですって。
その言葉をもらって
「ひとこさんにもそういう時期があって、それを乗り越えて今のひとこさんがあるんだ」
ということを知ったそう。
そこから自分の弱さを認めて役を作っていくということが大事だと学んだ作品であり役だったという話には聞いていて感動してしまいました。
舞台化粧について
この作品は上演当時に衣装もですが舞台化粧が話題になりましたね。
とくに下宿の面々や亡者の役の子たちはそれまでの宝塚の作品にはなかった、ものすごく攻めたお化粧でした。
ほのかちゃんのヴァランタンのメイクも最初タカラヅカニュースで見た時はびっくりしました。
それまで王子様のようにきれいな顔のほのかちゃんしか見たことなかったですからね。
あのメイクはかなり研究して作ったそうです。
指田先生からゴシック風にと言われ、パリコレを参考にと見せてもらってそれに近づけるように工夫したんだとか。
目の下にクマを入れたり、頬や額もかなり汚していましたが、目を見開いた時に目をすごく強調するメイクになっていて、本当に怖かったです。
ここでは話が出ませんでしたが、確かNOW ON STAGEで左の眉の傷の話もしていたと思います。
あれもヴァランタンの得体の知れなさを表すのに一役買っていたと思います。
作品の裏話
お稽古の時のカンパニーのまとまりの良さや下級生まで生き生きとお稽古していたという話もしてくれました。
時々舞台裏でみんなで撮った写真を見せてくれていましたが、すごい怖い舞台メイクをしているのに、とてもコミカルで仲の良さそうな写真にほっこり。
舞台でものすごく集中している分、袖では和気あいあいとしている様子が写真から知ることができたのもよかったです。
そして、裏話として聞かせてくれたのが、最後の立ち回りの場面の話。
家族の晩餐の席でヴァランタンがギョームに復讐しようとナイフで斬りかかる場面です。
あの場面は元々BGMがあったそうなんですが、擬闘の栗原直樹先生の提案でBGM無しでやることになったんだとか。
食器同士がぶつかる音や家具に身体がぶつかったりする音がある意味BGMになっていて、より緊迫感のある場面になっていました。
本当に演者の力だけになっていたのが素晴らしい。
息を呑む場面でしたね。
ギョームに撃たれたヴァランタンが椅子に座ってオクターヴたちのやり取りを見ていて、あざ笑うように拍手をする時の顔…、本当にすごかったです。
あんな顔ができるなんてほのかちゃんすごい!
あの場面は何度か繰り返し観たほどこの作品の中でも好きな場面です。
最後にほのかちゃんからはっちさんに役作りにおいて壁にぶつかった時のことを訊いた時のはっちさんの答えが素敵でした。
「今でも毎回壁にぶつかって苦しんでいる、でもそれが良いことだと思う。お芝居好きでしょ?苦しめ!(お芝居することは)おもしろ苦しいから」
というようなアドバイスでした。
ほのかちゃんはこの役をつかむためにすごくもがいたけれど、作品が終わってからまた悪役をやりたいと思ったそう。
本当にこのような作品でヴァランタンのような役を演じるほのかちゃんがまた見たいです。
読んで頂き、ありがとうございました。
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