愛月ひかるの男役集大成をようやく目にすることができました(星組 東京宝塚劇場公演観劇)

東京宝塚劇場でようやく星組公演を観劇することができました。
愛ちゃん(愛月ひかる)の退団公演でその男役集大成を見届けようと、愛ちゃんに注目して『柳生忍法帖』『モアー・ダンディズム!』を観てきました。

星組 東京宝塚劇場『柳生忍法帖』『モアー・ダンディズム!』観劇

『柳生忍法帖』

お芝居の『柳生忍法帖』は原作は読まずに観劇したのですが、別にネタバレは全然構わないタチなので、原作のウィキペディアやあらすじ、スカイステージやタカラヅカニュースのトークや観劇された方の感想などいろいろな情報を取り入れていました。
けっこうお話が分かりにくかったという声もあったのですが、私は全然分かりにくいということはなかったです。

登場人物はかなり多いですが、それぞれが個性的に描かれているので、どのキャラクターも魅力的でした。

中でも柳生十兵衛のこっちゃん(礼真琴)は主役だから尚更でしょうが、とても魅力的な人物です。

武芸を指南する堀一族の女たちから先生と慕われ、厳しい修行もさせるけれどあくまでも優しくて男気があって包容力もある、ちょっと三枚目的な面もあるけれどどこから見てもカッコいい男でした。
こっちゃんそのものでした(笑)

それに対して愛ちゃん演じる芦名銅伯は冷酷非道で謎多き人物、妖しい術も使って悪行を行うこっちゃんの十兵衛と相反する役です。

宝塚ではトップ男役と2番手男役が敵対する関係というお話は多いですが、ここまで2番手がラスボス感満載な役というのも珍しいのではと思います。

芦名銅伯の最強のビジュアル

これまで画像や映像でも何度も見ていた愛ちゃん(愛月ひかる)の芦名銅伯のビジュアルですが、生で観ると迫力がありました。
あの長い真っ赤な陣羽織、あれがあそこまで似合うのは愛ちゃんしかいないと思います。

出てくるだけで空気が変わるというか、ひや〜っと冷たい風が流れて闇が広がってくる感じがして背筋がゾクッとしました。

愛ちゃん本人が言っていた通り、芦名銅伯のようなラスボス的な役をできるのは今の宝塚で愛ちゃん以外に思いつきません。
それぐらい見事に演じていたと思います。

愛ちゃんのサヨナラ特別番組での、これまで演じてきたルキーニやラスプーチン、ロミジュリの死の役がすべてここに集約されているという話に納得しました。

愛ちゃんが言ってた「何一つ無駄なことはなかった」という言葉がまさにそのとおりだと思わされる怪演でした。

あの衣装やビジュアルにもこだわりが詰まっているようですね。
メインの衣装の着物の前の部分にドクロが描かれていて、おどろおどろしさ満点です。
長い髪の毛であまり見えませんが、陣羽織の背中には阿修羅像が描かれているそうです。
それがたまにチラッと見えた時にもドキッとさせられました。

そしてあの金髪にもこだわりがあるそうで、最初髪の色をどうするか考えた時は銀髪を思ったそうですが、ロミジュリの死が銀髪だったので金髪にしたとカフェブレイクで話していました。
結果、あの衣装の色には金髪でよかったと思ったそうですが、確かにあの赤い陣羽織とのコントラストがインパクトありました。

それにあのプラチナブロンド的な髪の色がまた、107歳ながら年齢不詳な美貌をたたえているという感じがすごく出ていました。

芦名銅伯と双子の兄弟天海大僧正との二役

実は芦名一族の生き残りは銅伯の他にもう一人銅伯と双子の天海大僧正がいたということでした。
これも愛ちゃん(愛月ひかる)が演じています。

その天海大僧正は銅伯と違って仏門に入り、今や徳川家にとってもなくてはならない存在。

そして二人のどちらかが死なない限りもう片方も死なないという因果があるそう。

天海大僧正は途中で銅伯の娘のゆらを通じて声だけを聞かせていましたが、その声にもこだわりがあると愛ちゃんがカフェブレイクで話していました。

脚本・演出の大野拓史先生と声色を銅伯と天海とで変えるのか同じにするのかを話し合った結果、同じ方が面白いということになって、声色もまったく同じにしたんだそうです。

銅伯と天海が語り合う場面もありましたが、声色が同じでもキャラクターの違いがちゃんと表現できていてすごいなと感心しました。

そして一場面だけでしたが、愛ちゃんが天海大僧正として出てくる場面もありました。

僧侶の衣装なのでもちろん違う人物だと分かるのは当たり前ですが、それだけでなく纏う空気も全く違っていたことに感心しました。

銅伯が漆黒なのに対して、天海は真っ白でした。
二役の演じ分けは本当に素晴らしかったです。

もう一つの演じ分けが、銅伯の若い頃の場面。

かつて会津を治めていた芦名一族が滅びた戦の場面で髪の毛も真っ黒な銅伯の若い頃を演じていましたが、妖しさやおどろおどろしさがなく若いギラギラ感や熱さのある銅伯でした。

ほんの短い場面でも現在の銅伯との差がしっかりと出ていた場面でした。

愛ちゃんも話していましたが、この場面があることで銅伯の根底にあるものが屈折して今に至っているということが、短いながらもよく表現できている場面でした。

この場面の最後に芦名一族の復活を誓った銅伯が、一旦刀を地面に置いてそれを持ち替えて構えてきっと顔を上げる所作がものすごく美しくてカッコよくて印象に残りました。

『モアー・ダンディズム!』

お芝居の『柳生忍法帖』とはまた違った愛ちゃんの男役の集大成がいっぱい詰まっていました。

真矢みきさん主演の『ダンディズム!』と同じプロローグの4色の衣装に分かれた星組生たちが並んで踊る場面。

そこから愛ちゃんの姿を追っかけていました。
そして、愛ちゃんがソロの場面もたくさんあります。

「薄紫のとばりの向こう」

プロローグの後、愛ちゃんが一人銀橋を渡りながら小椋佳さん作詞・作曲の「思い出は薄紫のとばりの向こう」という曲を歌います。

この曲は1986年の月組『ラ・ノスタルジー』で剣幸さんが歌って以来誰も歌っていなかった曲だそうです。

歌詞も素晴らしくて、薄紫の衣装も素敵で、客席に感謝の気持ちを伝えるように歌っていると愛ちゃんが話していた通り本当に素敵な場面でした。

銀橋を渡りきって最後に客席に向けて手を伸ばした愛ちゃんの笑顔がすっごく幸せそうで、その笑顔を見て涙がこぼれました。

「ゴールデン・デイズ」

初めに星組の若手男役たちが軍服姿で並んで出てきたのを見て、『いよいよこの場面だ!』と内心思いました。
幕が上がって真っ白な軍服で登場した愛ちゃん!

プログラムを見ると、この場面の愛ちゃんの役名は「プリンス」なんですね〜

ずっとおとめに『うたかたの恋』のルドルフが演りたいと書いていた愛ちゃんの為に岡田敬二先生が作ってくださった場面です。

娘役のドレスもショーでは珍しいお芝居で使われるような淑女のドレスで、キラキラで本当に素敵な宝塚らしい場面でした。
この場面の主演はまさに愛ちゃんでした!

「テンプテーション!」

真っ赤な衣装で大勢で踊る場面ですが、一瞬こっちゃんと愛ちゃんが二人きりで踊る場面があります。

宝塚大劇場の千秋楽のカーテンコールで、最後幕前に出てきた愛ちゃんがこっちゃんに「あの場面はこっちゃんと一緒に踊ってると自分も踊れている気分になれる」と言っていた場面です。

確かにこっちゃんのダンスが超絶で、一緒に踊っている愛ちゃんも超絶に踊れているなと思いました。

私が観たのはパルシステムの貸切公演だったので、ここでこっちゃんが「パル!」とささやき、それに愛ちゃんが「システム!」ってささやき返すというアドリブがありました(笑)

「アシナヨ」

「アシナヨ」という韓国の曲を使ったトップコンビのデュエットダンスの場面ですが、愛ちゃんも後ろの大階段上で歌いながらずっと出ています。

途中で、階段の下に降りてきた愛ちゃんの肩を後ろからこっちゃんがハグする仕草があります。
その時のこっちゃんの表情がなんともいえなくて…
ちょっと泣きそうな表情にも見えました。

そしてそのこっちゃんを振り返る愛ちゃんの笑顔がまた慈しむような素敵な笑顔で、ここでもまた涙がこぼれました。

パレード

そういえば、Twitterでパレードの曲がいまいち盛り上がらないという声がありましたが、なるほど〜と思っちゃいました。

どうしてこういう曲調にしたのかなと思いましたが、お衣装やシャンシャンがとっても素敵で、全体的には素敵なパレードでした。

愛ちゃんの2番手羽根がすごく素敵で。

薔薇の花束の形のシャンシャンがそれぞれ色合いが違っているのも素敵でした。

愛ちゃんは自分が好きなモーブピンクのシャンシャンで嬉しいって言ってました。

最後の作品のパレードが真っ白な衣装で、宝塚の王道のシルクハットというのも嬉しかったそうです。

最後、大階段から降りてくるこっちゃんと目を合わせてニコッとした愛ちゃんを見て、本当に素敵な光景だな〜と感動しました。

愛月ひかるの男役集大成を目撃できて幸せでした

これまでタカラヅカニュースやカフェブレイク、愛ちゃんの退団番組などで映像では観ていましたが、劇場で生で愛ちゃんの宝塚最後の公演をやっと観ることができました。

お芝居は愛ちゃんにしかできないラスボス的な役、そしてショーでは男役の美学が詰まった集大成的な愛ちゃんが堪能できて幸せでした。

もう一度観劇する予定です。
しっかり目に焼き付けてきたいと思います。

  

読んで頂き、ありがとうございました。

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