3月21日から始まった星組『Le Rouge et le Noir~赤と黒~』。
初日からずっと評判の良いこの作品をライブ配信で観るのを楽しみにしておりました。
昨日3月26日にライブ配信がありました。
このメンバーだからこそできた『Le Rouge et le Noir~赤と黒~』
今回星組は3つにチームに分かれての公演で、この『Le Rouge et le Noir~赤と黒~』に出演しているのはトップスターのこっちゃん(礼真琴)をはじめ少数選抜の22人です。
役名のある登場人物を演じるのが10人、その他はロミジュリの愛と死のような役割を担うルージュとノワール、そしてアンサンブル的にコロスだったり数々の役割をするオンブル(影)の下級生たち。
この役割配分が絶妙でした。
とくに役の10人が全員歌える人たちが選ばれているのがよかったです。
それも適材適所、これ以外ないと思える安心の配役でした。
礼真琴:ジュリアン・ソレル
宝塚でも繰り返し上演されてきたスタンダールの『赤と黒』ですが、今回はフレンチ・ロック・ミュージカルで、ストーリーは同じでもまったくの別物。
それをぜひ礼真琴でやりたいとなったんだろうな~と想像するほど、見事にこっちゃんはやってのけていました。
とにかくフレンチ・ロックの歌唱が素晴らしい!
これだけ歌唱力に定評があるメンバーが揃っている中でも、一人別次元でした。
いかにも難しい曲の数々でしたが、それをまったくぶれることなく見事に歌いこなしていて、それだけでなくそこに感情も乗っていてすごかった。
1曲1曲コンサートで聴いているようでした。
そしてもう一つ礼真琴がすごかったのはお芝居の繊細さと深さです。
フレンチ・ミュージカルらしく1曲1曲パフォーマンスがあってその合間にお話が進んでいくので、どうしても唐突に感じられるところもありました。
えっ、いつの間に好きになってたの?とか(笑)
それを納得させられてしまうこっちゃんのお芝居でした。
以前に見た宝塚版の『赤と黒』のジュリアンはあまりに野心家で自分勝手に思えて好きではなかったのですが、このこっちゃんのジュリアンは不憫に思えるところもあって感情移入して見ていました。
最後のありちゃん(暁千星)のジェロニモに「君はナポレオンのような英雄だよ」と言われ「ありがとう」と言った時に見せた悲しそうな笑顔にやられてしまいました~
歌い手の礼真琴だけでなく役者礼真琴を見せつけられた作品でした。
暁千星:ジェロニモ
この作品の大きな功労者はありちゃん(暁千星)ですね。
ストーリーテラーとして膨大な台詞量を話しつつアドリブで客席に話しかけるという難しい役割を本当に頑張っていました。
まだまだ緊張感が伝わってきて頑張れ~と思いながら観ていましたが、青年館に行く頃にはもっとこなれているかな?
今日の突撃レポートでも客席に話しかけるのは本当に緊張して大変だと言ってましたが、これまであまりそういったアドリブで何かをするといったことはしてこなかったですからね。
『今夜、ロマンス劇場で』の 大蛇丸で下級生のアドリブに対応するという場面があったので、あれで少し鍛えられたかなと思いますが。
それ以外にも登場人物としてもストーリーに参加して、後半ではジュリアンの友達としての重要な役割もあり、本当にずっと出ずっぱりなのがすごいな~と感心しました。
ストーリーに関わりのないところでもセットの上の方にずっといましたしね。
冒頭は難しい曲を一人でほぼ丸々歌い、こっちゃんとのハモリのデュエットもこなし、歌わないところでもキレキレのダンスを見せてと、本当に大活躍でした。
劇団がこの作品を選んだのはこっちゃんに主役のジュリアンをやらせる目的の他にありちゃんにこのジェロニモという役をやらせたかったのかな~と思いました。
それだけ革新的な存在感のある役でした。
エリザベートのルキー二もそうですが、こういう役はきっと役者として成長するのにうってつけなんでしょうね。
この役を経験してのありちゃんの成長が本当に楽しみです。
有沙瞳と詩ちずる:二人のヒロイン
この作品にはルイーズとマチルドという二人のヒロインがいます。
宝塚版の『赤と黒』でもそうですが、一幕では主にルイーズが、二幕でマチルドがジュリアンの恋の相手となります。
トップコンビが別々にという発表があった時に相手役が二人になるからかなと思ったのですが、もしルイーズがなこちゃん(舞空瞳)となっていたらちょっと違うかなと思ったかもしれません。
トップコンビプレお披露目の『ロックオペラ モーツァルト』はなこちゃんは妻のコンスタンツェ役でしたが、もう一人コンスタンツェの姉のアロイジアも相手役のような感じでした。
それがトップコンビお披露目には合わないな~と思ったりしたので、今回もなこちゃんがルイーズだったとすると違和感があったかもしれません。
ということで、ルイーズがくらっち(有沙瞳)、マチルドがうたち(詩ちづる)というのはすごく考えてるな~と感心しました。
有沙瞳:ルイーズ
ルイーズがくらっち(有沙瞳)だというのは本当にぴったりだと思います。
貞淑さと妖艶さを併せ持っていて、人妻なのにジュリアンが惹かれるのにも説得力があります。
こっちゃんとくらっちが組むのは2017年の『阿弖流為』ぶりですが、歌の相性がすごくいいと思います。
二人のデュエットも素晴らしかったです。
ジュリアンとの抱擁もものすごく絵になっていましたし、最後のジュリアンに向ける慈愛に満ちた表情はさすがでした。
これまでのくらっちの役で一番好きだったのは『龍の宮物語』の 玉姫でしたが、このルイーズも大好きな役になりました。
詩ちづる:マチルド
マチルドのうたち(詩ちづる)も本当にぴったり。
元々歌える娘役だとは思っていましたが、二幕の冒頭のようなロック調の曲も歌いこなせるなんて。
そして、さすがお芝居の月組出身ですね。
ジュリアンに駆け引きをしかけるところや、最後の牢獄のジュリアンに語りかけるところなんか上手いな~と思いました。
これからもっとヒロインを見たい娘役さんです。
次の『1789』の新人公演のオランプはうたちじゃないかなと期待しています。
その他のキャスト
上に書いた4人以外のキャストもみな芸達者ですね。
ひろ香祐、小桜ほのか:ヴァルノ夫妻
ヴァルノ夫妻はレ・ミゼラブルのテナルディエ夫妻のような役割ですが、ムッシュー・ヴァルノのヒーロー(ひろ香祐)もヴァルノ夫人のほのかちゃん(小桜ほのか)も素晴らしかったです。
ジュリアンを陰で貶めるのは常にこの二人なんですが、どこかコミカルで、憎たらしいのに憎めない感じが絶妙です。
ほのかちゃんはこれまでヒロインの役をやることが多かったですが、こういう役もできるとこれから役の幅が広がりますね。
歌も素晴らしいので、安心して聞いてられました。
英真なおき;ラ・モール侯爵、紫門ゆりや:レナール氏
そして、専科のお二人、ラ・モール侯爵のじゅんこさん(英真なおき)とレナール氏のゆりちゃん(紫門ゆりや)がまたこの作品を引き締めていました。
とくにじゅんこさんは登場されると場がぐっと引き締まります。
一昨年体調を崩されて心配しましたが、お元気になられて本当によかったです。
ソロの曲も素晴らしかった。
ゆりちゃんにもソロの曲がありましたが、以前より歌がさらに素晴らしくなりました。
お芝居にも説得力があるので、これからも専科生としていろんな組で活躍する姿を見たいな~と思って観ていました。
フィナーレとカーテンコールで救われます(笑)
お芝居は悲劇で終わりますが、お話が終わった後にまたジェロニモが登場して客席に話しかける演出がよかったです。
その流れでフィナーレに入って全員で歌い踊って、こっちゃんが登場しヒロインの二人と踊るのも美しくて。
この時のこっちゃんの白地に真っ赤な薔薇が描いてある衣装が美しかった。
突撃レポートでこっちゃんが教えてくれましたが、この薔薇は衣装の加藤先生が手描きで描かれたんだそう。
今回のお衣装には赤と黒という色彩以外に薔薇をモチーフにしているのが素敵でした。
そして3人のダンスの後に録音されたこっちゃんの歌が流れる中パレードになるというのが斬新。
これが本当に素敵でした。
宝塚はどんな悲劇でもフィナーレで華やかな気持ちで終われるのがいいですよね。
そして、カーテンコールでもこっちゃんのユーモアで笑いに包まれました。
この日から梅芸の上の階で全国ツアー組の公演が始まって、マチネ公演ではカーテンコールでそのことに触れたそうです。
ソワレでも言ってくれるかな~と期待したんですが、残念ながらそれはなかったです。
ですが、こっちゃんが「ライブ中継で観る方はポップコーンを食べながら観られるんですか?」なんて言い出して、客席がそれに答えるというなごやかな雰囲気になりました。
こんな風に楽しいカーテンコールで終わるのも救われる気がします。
お芝居の雰囲気のまま終わりたいという方もいらっしゃると思いますが、私は宝塚のこういうところが好きです。
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