昨日の星組『ME AND MY GIRL』のライブ配信に続いて、今日は天飛華音主演のバウホール公演『My Last Joke』のライブ配信を観ました。
バウホールらしくとても意欲的な作品だなと思いました。
凝った演出の素晴らしさとともに、主演のかのんくん(天飛華音)とヒロインのうたち(詩ちづる)の迫真のお芝居に心が揺さぶられました。
天飛華音バウ初主演『My Last Joke』ライブ配信
演出の妙に感心
この作品の作・演出は竹田悠一郎先生です。
幕が上がったら舞台の真ん中に重厚なデザインの扉が一つ置かれていて、風の音がずっと鳴っているところから作品の世界観に引き込まれました。
扉の台に「Nevermore」と書かれていますが、これはポーの物語詩『大鴉』の中の言葉で、これが最後まで象徴的に使われます。
扉のセットも突撃レポートでエドガーワゴンって呼ばれていた机のセットといつも一緒にあって、生と死の境目、死への入口といった意味で象徴的に使われていたのも素晴らしいなと思いました。
キャストが何人か出てきて、エドガー役のかのんくん(天飛華音)が机に座ったところで開演アナウンスが流れるというのも斬新でした。
かのんくんのその開演アナウンスが低い暗い声というところも竹田先生のこだわりを感じました。
プロローグからエドガーの生い立ち、母親や育ての母の死などが重く暗い感じで表現されていたので、この調子でずっと重苦しい雰囲気で進んでいくのかと思ったらそうではなく。
群衆がノリノリでエドガーを称賛する歌を歌う場面があったり、出版社の場面ではとてもコミカルだったりと、暗い場面と明るい場面の転換が実に絶妙で、竹田先生さすがだなと感心させられました。
ヴァージニア(詩ちづる)の死の後の史実(エドガーが数々の女性と浮名を流した)やエドガー自身の謎の死についてはさらっと触れられていただけだったのも、エドガーのイメージを悪くしないで終わってよかったなと思いました。
最後は大きな扉が開かれて、エドガーとヴァージニアが二人して死の世界へと旅立っていったところがとても爽やかだったのもよかったです。
客席降りも効果的に使われていました。
全体的に竹田先生の演出の妙を感じさせられました。
キャストごとの感想
天飛華音:エドガー・アラン・ポー
慎くん(極美慎)主演の『ベアタ・ベアトリクス』のエヴァレット役でお芝居の上手さを認識していましたが、今回のエドガー役はさらに成長を感じました。
繊細さと激しさが同居する難しいエドガー役を好演していました。
何度か感情を爆発させて声を荒げる場面がありましたが、そのリアルさにびっくりさせられました。
そうかと思うとヴァージニアに向ける視線は本当に優しくて、アップになった時の目のお芝居に何度もかのんくんすごいなと思いました。
このエドガー役を演じたことでまたさらに大きく成長しただろうなと思える作品でした。
詩ちづる:ヴァージニア
これまでトリプルヒロインやWヒロインの1人は演じたことがありましたが、今回が別箱では初の単独ヒロインのうたち(詩ちづる)。
一幕では天使のようにピュアで無邪気な少女、二幕ではエドガーへの深い愛と死への恐怖を抱えた儚さを見事に演じていました。
綺麗で澄んだ歌声も魅力的です。
将来のトップ娘役への期待が大きくなりました。
碧海さりお:グリスウォルド
『ベアタ・ベアトリクス』では主人公の親友をすごくいい人に演じていたちゃりおくん(碧海さりお)。
この作品では完全なる敵役、ヒール役でした。
途中エドガーと和解するのかなと思いきや、最後まで嫌なやつでした(笑)
最後、エドガーの死後は少し理解を示していましたが。
普段いかにもいい人そうなちゃりおくんが、ここまで主人公と敵対する役も珍しいですよね。
『1789』のラマールも敵側でしたがコミカル担当でしたし。
でもこういう役も上手いなと感心しました。
稀惺かずと:ナサニエル
ちゃりおくんのグリスウォルドに対してつんつん(稀惺かずと)のナサニエルは終始エドガーの味方でめっちゃいい人です。
ストーリーテラーだと聞いてましたが、一貫してその役目をするわけではなかったです。
最初の方と二幕の途中で長い説明台詞がありました。
でもソロの歌もあって、暗い重苦しい場面の後につんつんが出てくるとパッと明るくなる華やかさがあります。
瑠璃花夏:フランシス
ナサニエルと同様にエドガーとヴァージニアを最初から最後まで温かく見守るフランシスを演じたちなちゃん(瑠璃花夏)。
研7になってこんなに慈愛に満ちた大人の女性も演じられるようになったんだなと感慨深いです。
その他印象に残ったキャスト
他にも魅力的な役がたくさんありました。
鳳真斗愛
初日映像を見た時からものすごく印象に残ったのが大鴉をやったもえか(鳳真斗愛)です。
『エリザベート』の黒天使や『ロミオとジュリエット』の死のような役割ですね。
プロローグから登場して無表情かと思ったら狂気に満ちた表情になったり、そしてキレのあるダンスでエドガーの死への恐怖を具現化していたのがすごかったです。
大希颯
あとはロングフェロー役の大希颯くんは敵側の人間なんですが、いい人感が出ていて憎めない可愛い役でした。
そうそう、ロングトーンがすごかったです。
月組の『ピガール狂騒曲』の時のれいこちゃん(月城かなと)を思い出しました。
夕陽真輝
バートン役のまっきー(夕陽真輝)もコミカル担当で、出てくるだけで場が和みます。
登場シーンでは語尾をやまびこのように繰り返すギャグをやって笑いを誘っていました。
それはこれまでもやっていたのかなと思いましたが、おそらく今日の回限定で、続くナサニエル、エドガーまでがそのやまびこギャグをやって、ちぐさん(美稀千種)演じるトマスから「お前もか」ってツッコまれてました(笑)
そして、最後にはそのちぐさんもやまびこギャグをやって吉本新喜劇のように「チャンチャンッ」と効果音まで入ってました!
暗い作品の中で貴重なお笑い的場面でしたが、まっきーのキャラあってのものだったと思います。
カーテンコール
この作品にはフィナーレはありません。
ですがパレードで主題歌の「My Last Joke」を歌った後、エドガーを称賛するコミカルなナンバーを全員で歌ったのが楽しい雰囲気で終われてよかったです。
そしてカーテンコール。
まず組長のちぐさんのご挨拶の後、ちぐさんから
「全身全霊で役と向き合い、彼女にしかできないエドガー・アラン・ポーが生まれました」
と紹介されてかのんくんが千秋楽のご挨拶をしました。
天飛華音の涙ながらのご挨拶
かのんくん(天飛華音)のご挨拶が本当に立派で、胸にぐっと刺さりました。
まずは無事に千秋楽を迎えられたことへの感謝の気持ちを述べ、主演という立場でこれまでより近くから作品を作る現場を見て、プロフェッショナルな人たちの愛とこだわりが詰まった唯一無二の世界だと感じたと話していました。
「より良い舞台を届けたいという思いが強ければ強いほど共鳴する時もあれば衝突する時もある。でもそれには本気が詰まっている」
「人の思いは不確かなものだけれど、本気で思いを投げたらそれを誰かが受け止めてくれるということをこの公演期間で実感しました」
「生の舞台だからこそ届けられるものがあると信じています。これからも待ってくださるお客様がいる限り、舞台を通して私の真心を精一杯お届けしたいです」
というようなことを目に涙をためながら声を震わせて話すかのんくんを見て、こちらまでうるうるきてしまいました。
このような状況下での公演なので、やっぱり舞台に立つタカラジェンヌもいろいろと思うことがありますよね。
観ている観客の私たちもやっぱりいろいろと考えてしまいますもんね。
その次のカーテンコールでは、
「人は人を傷つけることもできるけれど、救うことができるのも人だけだとエドガーから教えてもらいました」
「人間というのは複雑で難しい生き物だと思いますが、愛もたくさんある。その愛と思いやりを忘れずに向き合っていきたい」
というようなとても素敵な言葉を客席に投げかけたかのんくんでした。
かのんくん、ご挨拶でもものすごく成長しましたね〜
今日は何の日?
3回目のカーテンコールで、かのんくんが
「皆様お待ちかねの『今日は何の日?』です」
と言い出したんですが、それって毎回やってたんですかね〜?(笑)
今日は29日なので
「肉の日…ではなく、福の日です」
と言うかのんくんを見て、ちゃりおくん達が『服の日?』という感じのリアクションをしていました(笑)
そして
「すべての皆様に幸福が訪れますように」
と福を客席に送る仕草をしてくれました。
星組パッション
4回目はスタンディングオベーションになったので、『星組パッション!』をやることになりました!
「礼真琴様から『やってしまいなさい』と言っていただいたので」
だそうです。
それが
「星組パッションをさせていただきたいと思います」
と言うところで盛大に噛んでしまったかのんくん、客席も舞台上も大笑いでした(笑)
大事なところで噛んじゃいましたね(笑)
で、なぜか小声で『星組パッション!』の説明をした後
かのんくん「熱いぜ!」
全員「星組!」
かのんくん「燃えろ!」
全員「星組!」
かのんくん「進め!」
全員「星組!」
かのんくん「星組!」
全員「パッショ〜ン!」
と大盛り上がりのうちに『星組パッション!』をやることができました。
なんですが…盛り上がりに盛り上がった拍手を止めるためにチャチャチャとタモリさんみたいにやろうとしたのに上手くやれず…
「やり方をちゃんと勉強しておくんだった」
と悔しがるかのんくんがめちゃくちゃ可愛かったです。
本当にこの人は愛されキャラです♪
読んで頂き、ありがとうございました。
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