「これだけの悲劇的な事態を招いたにも関わらず縦の関係を重視する姿勢は間違っている」とご遺族の代理人(宝塚歌劇団調査報告書発表とご遺族側代理人会見)

13日深夜、NHKが14日午後、宝塚歌劇団が調査結果を会見で発表すると報じていました。
すでに対処の方針は決まっていたのでしょうか。
調査結果受領の発表からあまり間をおかないタイミングの会見で、期待と不安が交差していました。

宝塚歌劇団の会見、いろいろモヤモヤ…

ます、理事長のお詫びから始まりました。
これから誠心誠意対応していくとのことでした。

宝塚歌劇団理事長、阪急阪神HDの責任に言及

宝塚歌劇団の会見の出席者は木場健之理事長、村上浩爾専務理事(次期理事長)、制作部長でした。
阪急阪神HD、阪急電鉄の役員などの姿はありませんでした。

監督責任を果たせなかったということで木場理事長は引責辞任、理事を務める阪急阪神HDの角和夫・阪急阪神HD代表取締役会長兼グループCEO、嶋田泰夫・阪急阪神HD代表取締役社長(阪急電鉄株式会社代表取締役社長)、大塚順一・阪急阪神HD執行役員(阪急電鉄株式会社専務取締役)はそれぞれ3か月報酬の一部を返上すると発表されました。

その後の質疑で、木場理事長から阪急阪神HDの責任に言及されたことに驚きました。

確かにHDの角CEO以下、報酬の一部を返上されるとのことですが、あくまで宝塚歌劇団の理事としての責任を果たせなかったためと思って聞いていました。
まさかHDの責任まで電鉄の執行役員の木場理事長が言及されるとは思いませんでした。

事前に調整されていたことなのでしょう。
これは宝塚歌劇団だけの問題ではなく、阪急阪神HDという企業グループの問題と認識されているということ。
なのに、会見に出られたのがHDの役員ではなく傘下の阪急電鉄の執行役員の木場理事長でしかないことにちぐはぐな感じを受けてしまいます(モヤモヤします)

「指導」や「叱責」はあったが、いじめやハラスメントは認められなかった

調査委員会はいじめやハラスメントは認定しなかったと報告されました。
認定されるようなことが宙組の中になかったのであれば、それは喜ばしいことです。

業務遂行上の不備があったことについて、上級生が下級生を指導・叱責することは当然のこととの認識です。
調査委員会の結論は「指導」は不当ものではなかったとのことです。

指導や叱責の具体的な中身はわかりませんが、それはいじめやハラスメントに該当するようなものではなかったという認識のようです。

「下級生の失敗はすべてあんたのせいや」「マインドが足りない」「嘘つき野郎」
などの言葉も、きっと私たちが脳内で再生するようなきつい口調ではなく、優しさと思いやりあふれる励ましの言葉だったということでしょうか。

「厳しい叱責が今回の事件に繋がった可能性」についての質問は非常に大事な指摘と思うのですが、残念ながら村上浩爾専務理事は正面からは答えられませんでした。

会見で質問に回答された木場理事長も村上専務理事も、過密スケジュールで心の余裕をなくした上級生から少し厳しい指導が時期的に重なってしまっただけ(いじめやハラスメントではない)という認識のようです。

いっぱいいっぱいになってしまっているところに、叱責や指導が重なった(だけ)」

と会見のいくつかの場面で語られました。
それこそが問題だと遺族側代理人に指摘されるような言葉です。大丈夫でしょうか?(モヤモヤします)

 

なお、ヒアリングを拒否された生徒さんが4名いらしたという話があって気になりました。
その理由は明かされませんでした。

宙組東京公演ができる可能性もあるようです

もうダメかなと諦めていた宙組の「PAGAD」「Sky Fantasy! 」ですが、木場理事長は「出演者の心身、安全を確認した上で実施してまいりたいと考えております」との回答でした。

いま宙組がどういう状況にあるのかわかりませんが、ちょっと驚きました。

初日は25日に迫っていますが、間に合うのでしょうか?
「出演者の心身、安全を確認」して実施するということです。

また発表するということだったと思います。
発表を待っていますが、この状況でどんな初日になるのでしょう…(モヤモヤします)

ご遺族代理人の話はとてもわかりやすかったです

宝塚歌劇団の会見のスタートから1時間少し遅れてご遺族の代理人の会見が東京で行われました。
調査委員会のヒアリングをご家族も代理人も受けられていたようで、調査委員会の報告も事前にご覧になられていたようでした。

宝塚歌劇団の認定する労働時間はご遺族代理人の主張よりかなり少ないながら管理責任は認めました。
一方、劇団はハラスメントの存在は認めず、これを遺族側代理人の川人博弁護士は「失当」と表現されました。

宝塚歌劇団は「いじめ」と「パワハラ」の違いがわかっていない?

代理人のお話では、いじめとハラスメントは別物で、代理人は「いじめ」とはこれまで言ったことはないとのことでした。
「いじめとパワハラは別」で、劇団にはそこをわかって欲しいとおっしゃっていました。

劇団がわからないのか阪急電鉄がわからないのか、阪急阪神HDとしてわからないのかわかりませんが、この違いがわからないとすれば企業として重大です。
木場理事長も電鉄の執行役員とは言え、経営幹部のお一人です。
大丈夫でしょうか…?

パワーハラスメント(厚労省)<>

ハラスメントには定義があります。
厚労省のページには以下のように書かれています。

会社勤めをしていれば誰でも目にしたことのある文言ではないかと思います。

1)身体的な攻撃
暴行・傷害
2)精神的な攻撃
脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言
3)人間関係からの切り離し
隔離・仲間外し・無視
4)過大な要求
業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害
5)過小な要求
業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと
6)個の侵害
私的なことに過度に立ち入ること

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/seisaku06/index.html

代理人弁護士は、第4類型「過大な要求 遂行不可能なことの強制」に該当すると指摘されました。

たしかに、これに当てはまってしまっているように見えます。

「縦の関係で成長してきた」宝塚そのものが問題なのかもしれません

ハラスメントが何かわかっていないのであれば、また同じことをやるでしょう。
そうならないために社会でも様々にアラートが鳴らされ、企業ではいろんな階層で繰り返しハラスメント研修が行われているはずです(阪急阪神HDではやってないのでしょうか…?)

劇団の会見でも過剰な業務は認められていましたし、「いっぱいいっぱいになってしまっているところに、叱責や指導が重なった」とのことでした。
劇団が認めてしまった内容だけで前項のパワハラの定義に当てはまっています(いるように見えます)。

一定の不備があったとしても、過剰な要求をしている状況でそれを棚に上げ叱責するのはハラスメントそのものと代理人はおっしゃっていました。

では、誰がそれをやったのか。
もちろん、木場理事長がおっしゃるように阪急阪神HDに責任があるのでしょう。
企業風土の問題です。

しかし、実際にその状況の現場で「指導」「叱責」したこと自体がパワハラとされるのではないでしょうか。

「指導」した上級生、「叱責」した上級生が存在すること自体が問題なのだと思います。
そういう問題意識はないのでしょうか…?

「これはパワハラとしてなくすようにすべきかと考えるべきか、それくらいのことはあっても仕方ないと考えるか」

というのはご遺族の代理人の言葉です。
阪急阪神HDのグループ内でハラスメントは許さないと考えるのか、それとも「それくらいのことはあっても仕方ない」と考えるのか。
ご遺族にも代理人からも、これが問われているのではないでしょうか?

上級生から下級生への指導は必要でしょう。
そうして宝塚は形作られ進化してきたのだと思います。
しかし、「縦の関係で成長してきた宝塚」という枠組みの中で考えると、危ういのかもしれません。

 

「これだけの悲劇的な事態を招いたにも関わらず縦の関係を重視する姿勢は間違っている」

 

という代理人の川人博弁護士の言葉はあまりに重いです。
そして、「縦の関係の中で生じる具体的な弊害を示しながら」劇団と話しをしたいとおっしゃっていました。

私達ファンも、生徒さんたちの「上下関係の厳しさ」や過剰な「頑張り」を美談として受け取ってしまっているところがあります。
娘さんが徹夜で髪飾りを作ったというような話を「いい話」として聞いてしまっています。
その全てが間違っているのかもしれません。

木場理事長は新人公演の長としてどれほど幅広く過剰な業務を負ってらっしたことを知らなかったそうです。
劇団は放っておけば生徒が自律的にやってることですべてが上手く行くと思ってらしたのかもしれません。

では、そのような現場の把握しかできていない理事長が「指導」「叱責」が具体的にどのようなものか、ご存知なのでしょうか?
劇団の会見では「指導」という言葉があまりに都合よく使われているような気がしました。

 

守るべきものを守っていかなければ、それはもう「宝塚」ではないということになってしまうのかもしれません。
しかし、それが今回の悲劇的な出来事の根源にあるのだとしたら、その「守るべき」はもう放棄して、新しいものを創造しなければならないのではないでしょうか。
それにいかに時間がかかろうともファンは待っていますし応援しています。

どうかよい結論に至りますように。

  

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