近づけば離れ、離れれば近づく…龍の宮物語(瀬央ゆりあバウ主演)

6月21日21時、タカラヅカ・スカイ・ステージの星組バウホール公演『龍の宮物語』(瀬央ゆりあ主演)のファーストランを見ました。

この作品、6月にときめきチャージ企画でアンコールアワー枠で放送されましたが、実は録画に失敗して見られなかったんです。
昨年の上演時から評判良かった作品なのですごく楽しみにしていたのに残念でならず、今月また放送してくれるというので、余計に期待が高まっていました。

先月の放送時は字幕が付いていなかったそうですが、今回は字幕付きだったので内容が頭に入って来やすくて良かったです。
台詞を聞きながらこんな字を書くんだ〜とか、この人がこの台詞言ってるのね(字幕は誰が話しているかも表示されます)とかいうこともよく分かったし、歌詞の内容もよく分かりました。
最近の作品の放送は字幕付きなのがすごくありがたいです。

 

「龍の宮物語」作品概要

作・演出:指田珠子

お話は『夜叉ケ池伝説』と『浦島太郎』を元に作られたオリジナル作品で、演出家指田珠子先生の宝塚バウホールデビュー作です。

見終わった途端一緒に見ていた家人と「面白かったね〜」と顔を見合わせました。

お話の面白さもさることながら、お芝居の構成、シンプルながらに効果的なセット、登場人物のキャラ設定などどれも感心させられました。

指田珠子先生は宝塚の若手演出家のお一人ですが、第2の上田久美子と呼ばれているとか。
この『龍の宮物語』が『月雲の皇子』や『星逢一夜』など話題になったウエクミ作品を思い起こさせるからでしょうか。

このコロナ禍を脱して大劇場以外の公演も再開されるようになったら、『龍の宮物語』も上田先生のバウホールデビュー作の『月雲の皇子』のように、いつか再演されて東上も出来るといいな〜と思います。

 

音楽:青木朝子

曲は青木朝子先生

『EXCITER』や『Apasionado!!』など前から青木先生の作る楽曲は好きでした。この作品の曲も歌詞とメロディーラインの情感がぴったり合ってるし、メロディーも美しいです。
全部歌うには難しそうではあるけど…

NOW ON STAGEでは出演者たちが、せおっち(瀬央ゆりあ)演じる清彦のナンバーはメロディーラインが清彦の心情にピッタリ合っていると話していました。
誠実で真っ直ぐで、誠実すぎる故に愚かで不器用なのが清彦。それをナンバーで表していると。
また、龍神様役の天寿光希は、芝居から歌に入って行くのがナチュラルで、感情がその音になっているのが青木先生の曲のすごいところだと言ってました。

 

公演情報

主な出演者

星組
瀬央ゆりあ(伊予部清彦)※主演
有沙瞳(玉姫)
美稀千種(島村政光/銀山)
天寿光希(龍神 火照)
大輝真琴(黒山椒道)
紫月音寧(岩鏡)
紫りら(木蓮)
拓斗れい(回想の青年)
天華えま(山彦)
朱紫令真(白川鏡介)
天飛華音(火遠理)
奏碧タケル(子供の頃の清彦)
水乃ゆり(百合子)
紅咲 梨乃(伊吹)
澄華あまね(笹丸)

劇場及び公演期間

バウホール
公演期間:2019年11月28日(木)~ 12月9日(月)

プロローグ

物語の始まり…

プロローグから幻想的な雰囲気が漂っていて、これから始まる愛憎劇を予感させます。

NOW ON STAGEでせおっちが語っていましたが、プロローグは清彦が今もよく見る夢を表現しているそうで、子供の頃に夜叉ケ池で玉姫に会い、桜蓼(さくらたで)の花をいつか見せるという約束をしたことをかすかに覚えていることが表現されています。

 

清彦と玉姫

奏碧タケルくん演じる子供の頃の清彦が舞台からはけた後、いよいよせおっち登場!!

そして清彦のソロナンバーに入りますが、せおっち、だいぶ歌が上手くなりましたね〜

舞台上には上段に龍の宮の人たち、下段に清彦をはじめ地上の人たちが並び、主だった登場人物がほぼ勢揃い。

そして、清彦のソロと同じナンバーを今度はくらっち(有沙瞳)演じる玉姫とデュエットします。

玉姫がとっても美しいです。書生らしい爽やかな出で立ちの清彦と違って玉姫は和装とも洋装とも言えない変わった衣装で、でもそれが玉姫の人外感をよく表していると思います。

島村家の別荘の場面

プロローグの後は清彦と他の4人の書生たちが下宿先の島村家の別荘の離れで百物語をしているシーン。

清彦は生真面目で仲間たちからいじられる存在のようです。

そこで一人が語った夜叉ケ池伝説から、清彦が肝試しに夜叉ケ池へ行って来いと言われることになります。

それというのも、清彦が子供の頃に夜叉ケ池の近くの祖母の家に住んでいたことがあると言ったのと、書生たちの部屋を覗きに来た島村家の令嬢の百合子に自分は怪談話など信じないと言ったから。

他の3人は清彦に行け行けとけしかけますが、その中でぴーちゃん(天華えま)演じる山彦だけは執拗に行かせまいとします。

 

山彦

山彦はお調子者ですが、清彦の事をやたらと心配します。

この時点で山彦は何かを知ってるんだなと思われますが、実は清彦と山彦は意外な関係性があるんです。

それと、清彦が龍の宮から帰ってきた地上の世界で取る行動と設定に「えっ!?」と驚かされました。
NOW ON STAGEでぴーちゃんが話していたけど、ある意味一番清彦の事を思っていたのは山彦だと。

確かにそうでした。

山彦のぴーちゃんが良い味出してます。ぴーちゃんはこの当時まだ研8ですが、もうすっかり貫禄がありますね〜

 

百合子

桜蓼(サクラタデ)

もう一人重要な役が水乃ゆりちゃん演じる島村家の令嬢、百合子。

白川鏡介という許婚がいながら清彦に想いを寄せていて、清彦も憎からず思っているのに何もモーションをかけてくれないので、自分の方からモーションをかけるという大胆なところがある女性。

百物語をやってる時に離れの書生たちの部屋へやって来て、その後母屋の自分の部屋へ帰るのに清彦に送ってくれと頼むんです。

その時に清彦は夜叉ケ池のほとりに咲く桜蓼(さくらたで)を摘んでくるという約束をし、そのせいで清彦は翌日、夜叉ケ池へ行っちゃうんです。

清彦が姿を消した後は体調を壊してしまうけれど、その後予定通り白川さんと結婚する現実的なところもあります。心の中ではずっと清彦の事を想っていたようですが。

彼女はバイオリンが得意でいつも好きな曲をひいていて、その曲がまた後に繋がる伏線となってくるんです。

水乃ゆりちゃんは二幕で百合子の娘の雪子も演じていますが、そこでバイオリンの曲が効いてきます。

 

その他登場人物

百合子のお父さんの島村氏は美稀千種さん。

島村氏としての出番はあまり多くはないですが、娘の事にも書生たちの事にも理解があり、なかなかの好人物のようです。

ちぐさん(美稀千種)は二幕で百合子の夫の白川さんに付き纏う顔役の銀山という別の役で出てきます。百合子さんのお父さんだったちぐさんが、二幕では娘の夫を脅す役で笑っちゃいましたが、二幕の役のほうがちぐさんの本領発揮という感じでした(笑)

 

そして、朱紫令真くん演じる白川鏡介。

お金持ちの跡取り息子らしくちょっと高圧的なところがあり嫉妬深くもあるという役どころ。

上演当時研6かな?少し演技に硬さがありましたが、30年後の落ちぶれた演技は良かったです。

 

龍の宮の場面

山彦の心配をよそに、清彦は百合子との約束を果たすために翌日、夜叉ケ池へ行ってしまいます。

そこで山賊に襲われている玉姫を助け、お礼にと池の底の龍の宮に連れて行かれるんです。

そこで、玉姫を助けてくれた清彦のために浦島太郎よろしく宴が催されます。

 

宴のシーンは楽しげでメンバーがそれぞれ個性的で、コメディタッチでもあるんですが、どこか不思議で不穏な感じも漂っていて…

 

宴がお開きになった後、玉姫のために作られた庭(作り物の月という設定の月のセットが幻想的で素晴らしい)で何故か常に清彦に冷たい態度を取る玉姫に、清彦は戸惑いながらも段々と惹かれていくんです。

そこで歌われる清彦と玉姫のデュエット曲がまた素晴らしい。

歌詞の中で『近づけば離れ、離れれば近づく』という言葉が何度か繰り返されますが、2人の関係性を絶妙に表している歌詞です。

ある理由から清彦を憎み、殺すために龍の宮へ連れてきた玉姫も、あまりにも真っ直ぐな性格の清彦に少しずつ惹かれていきます。「悪党ならば…よかったのにな」という台詞が切ない。

玉姫役のくらっちの演技が本当に素晴らしいです。そして歌唱も。
せおっちとくらっちは以前轟さん主演の『ドクトル・ジバコ』でも恋人役でしたね〜

そして、舞台上で交互に龍の宮と島村家の別荘を見せることで、清彦が龍の宮に居る数日の間に地上ではどんどん年月が経っている様子を表す演出に感心させられました。

 

龍神と火遠理

てんてん(天寿光希)演じる玉姫の夫・龍神と天飛華音くん演じる火遠理は兄弟です。

最近一癖も二癖もある役をやることが多くなったてんてん。

この役は単に黒い役ではないけれど、玉姫を愛するがあまりどんどん間違った方へ進んで行ってしまう、清彦とは違った意味で不器用な人。
そしてその玉姫からは本当には愛してもらっていない可哀想な人です。

龍神様のナンバーも難しそうでした。フレンチロックっててんてんは言ってました。

 

その龍神様をひたすら想っている弟の火遠理も素敵なキャラです。

天飛くんって元気な少年役が多い印象でしたが、この火遠理はほとんど動きのない静かな、でも心の内は熱い印象の役だな〜と思いました。

火遠理の言っていることは全くもって正しいのに、龍神様は全然耳を貸さないんです。

NOW ON STAGEで天飛くんが「この作品の中で一番龍神様を想っているのは私でございます」って言ったらてんてんが「初めて知った」って驚いてて、それに今度は天飛くんが「えっ!?届いていない…」と嘆いていました。

届いていなくて正解なんだよってせおっちから言われて「ああ、そうですね」と渋々納得してたのが可愛いかった(笑)

 

その他登場人物

あとの龍の宮の人たち、ベテラン勢では黒山椒道の大輝真琴くん、岩鏡役の紫月音寧ちゃんが出番は少ないけど存在感があります。
特に岩鏡は龍神様も怒らせては大変だと思っているようです(笑)(NOW ON STAGEにて)

その他のメンバーでも個性豊かなキャラが揃っていますが、特に笹丸と伊吹が重要な役どころを担っています。
笹丸は澄華あまねちゃん、伊吹は紅咲梨乃ちゃん、まだ研4の娘役の2人が頑張っていました。

 

二幕

一幕の終わりに命を奪われる代わりに二つの呪いを持たせれて地上へ返された清彦。

浦島太郎のように数日龍の宮に居ただけのつもりが地上では30年が経っていて、百合子も震災で亡くなっていた。
その後白川と再会し、そこから龍の宮に再び行くことになる清彦です。

一幕での色々なことが伏線になっていたんだって気が付かされる事が多いです。
特に最後まで見てからもう一度最初から見ると余計にそれが分かります。

二幕については感想を述べるとネタバレになってしまうので、ここまでにしておきます。

ただ、最初にも言いましたが、お芝居が終わった途端面白かった〜という感想が真っ先に出てきました。
もちろんお話は切なくて涙涙の結末なんですがね。

 

フィナーレ

この作品にはフィナーレが付いていて、最後に華やかな宝塚作品の世界に浸ることができます。

龍神様のてんてんも火遠理の天飛くんもカッコいい衣装で男役ダンスを踊っていますが、お化粧が元のままなのでちょっとというかかなり違和感が…(笑)

せおっちとくらっちのデュエットダンスもあり、お話と違って幸せそうな2人のダンスも堪能できます。

 

「龍の宮物語」スカイステージ放映関連情報

今後のスカイステージの放映予定

21日がファーストランで、その後25日(19:30)、28日(14:00)、30日(24:00)、7月は18日(23:00)、23日(09:45)とリピート放送があります。

まだ見てない方は是非ご覧になることをお薦めします!

 

NOW ON STAGE

最後に公演の放送に併せてNOW ON STAGEも今回再度放送されました。

参加者
瀬央ゆりあ、有沙瞳、天寿光希、天華えま、天翔華音、水乃ゆり
司会
華陽子

こちらを見てから作品を見ると、より理解が深まります。
私はまず作品を見て、その後NOW ON STAGEを見て、また作品を見ました。

放送スケジュールは
6月21日(20:15)、28日(13:15)、30日(23:15)
です。

 

最後に

上演当時から評判が良く、スカイステージでの放送を心待ちにしていた『龍の宮物語』

下級生の頃から何かと気にかけてきたせおっちが主演ということもあって、見るのが楽しみでなりませんでしたが、この作品を見ることができて本当に良かったです。

元ネタがあるとは言えオリジナルの脚本で、構成も素晴らしく、見どころ満載な作品。

そして何より、下級生が多い公演ですが、全員が作品を愛しているのが伝わってくる公演でした。

千秋楽の収録だったので、ちょこちょこそれにまつわるアドリブもあったりと、そういう楽しみもありましたし、せおっちの挨拶が可愛くてほっこりさせられました。

出来るなら再演があることを望みます。
そして、いつの日かせおっちがトップになった暁には、円盤化もされるといいですね〜

  

読んで頂き、ありがとうございました。

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