『カジノ・ロワイヤル』は真風涼帆・潤花の退団公演らしい作品でした

先日、チケトレでチケットを確保して宙組『カジノ・ロワイヤル』の宝塚大劇場公演を観劇してきました。

この作品、初日が開けてすぐの頃はコメディ要素の強い内容に「退団公演らしくない」というような意見がけっこうあったようです。

ですが、公演を重ねていくうちに評価が上がっていって、こういう退団公演もありではないかという声も多くなっているように思います。
私も実際に観劇してみて、この作品は退団公演に相応しい作品だと思いました。

※今日のこの段階ではネタバレになるようなことも書いています。ご注意下さい。

真風涼帆・潤花の集大成の作品『カジノ・ロワイヤル』

原作の『カジノ・ロワイヤル』はイアン・フレミングの007シリーズで、これまで何度か映画化もされています。

私は原作本は読まずにダニエル・クレイグ主演の映画版だけ見ました。
数あるジェームズ・ボンド役の中でもダニエル・クレイグのボンドは最もシリアスに描かれていますので、この『カジノ・ロワイヤル』もかなりシリアスな内容でした。

なので皆さんの感想をSNSで拝見して、宙組版とはかなり違っているだろうなと覚悟していました。

ロマノフ王朝の末裔が絡んでくるところは小池修一郎先生の完全オリジナル。
そして、これまでの宙組作品のパロディも織り込まれて笑える場面もたっぷりでした。

でもやっぱりゆりかちゃん(真風涼帆)のジェームズ・ボンドはじゅんはなちゃん(潤花)の言葉を借りればひっくり返るほどカッコよかったです。
他のキャストもそれぞれの持ち味が活かされた絶妙な配役でした。

ジェームズ・ボンドは真風涼帆の男役集大成

ゆりかちゃんのボンドは最初から最後までとにかくカッコいいです!

小池先生がパンフレットで「真風がやらずして誰がやると言うのだ」と書かれてましたが、いま宝塚で、いや日本人でジェームズ・ボンドを演じられるのはゆりかちゃん以外いないだろうと思えるほどの当たり役でした。

とにかくプロローグのピストルを使ったダンスから最高です。

あのネットリとしたウインクもさすがゆりかちゃん!です。

そして、スーツからタキシードからロシア貴族の伝統的な衣装まで何でも着こなしてしまっていました。

銃撃戦や剣での立ち回り、バカラの場面でのカッコいいダンスナンバーなど男役としての見せ場がたっぷりあります。
デルフィーヌとの息が止まりそうなほどきっついキスシーンも2回もありますしね。

でもただカッコいいだけじゃなく、しっかり笑わせてもくれるんです。
まさにこれまでゆりかちゃんが積み上げてきた男役としての技量がすべて活かされた役だったと思いました。

潤花のデルフィーヌも集大成的な役でした

じゅんはなちゃん(潤花)が演じるデルフィーヌはロマノフ家の末裔で、後継者に指名されたことから騒動が始まるのですが、元は確固たる信念を持った大学生。

その自分の信念を貫こうとする強い女性はじゅんはなちゃんがこれまでにも多く演じてきた役ですね。
この役もじゅんはなちゃんの集大成となる役だな~と思って見ました。
じゅんはなちゃんの持ち味がすごく活かされた役だと思います。

役名の”デルフィーヌ”がギリシャ語で”イルカ”の意味があるということで、イルカの話題が何度も出てきます。
ボンドがデルフィーヌに向かって歌う「イルカが人を愛するように」という曲まであります(笑)

いい曲なんですが、「音波を出して危機を知らせる」などイルカの生態を教える歌詞に笑ってしまいました。
小池先生はよっぽどイルカが好きなんでしょうか?(笑)

人間がイルカのように許し合って愛し合えば世界は平和になるというテーマが、デルフィーヌの信念と重なっているということなのかなと思いました。

これまでの宙組の作品のオマージュがたっぷり

宙組といえばロシア、ロマノフ王朝にゆかりのある作品が多かったという印象があります。
『神々の土地』や『アナスタシア』など。

今回ロマノフ家の末裔が登場したのも、それらの作品へのオマージュだったのではと思います。

そしてそれ以外にもこれまで宙組で上演された作品のオマージュというかむしろパロディというべきシーンがたっぷりあって、そこでも大いに楽しませてもらいました。

まずはロマノフ家の説明をする映像で登場したのが『アナスタシア』ですっしーさんが演じたマリア皇太后の写真でした。

カジノの場面は『オーシャンズ11』ですし、ボンドとル・シッフルの対決シーンは『シャーロック・ホームズ』ですし、『神々の土地』で愛月ひかるさんが演じたラスプーチンにキキちゃんが扮するという場面も(笑)

究極はすっしーさんが演じるゲオルギーは何度もル・シッフル達から『エリザベート』のルドルフよろしく「皇帝ゲオルギーは立ち上がる~♪」と節つきでおだてられるのがなんとも最高でした。

そんな風にゆりかちゃんが出演して来た作品のパロディが登場するところでも大いに楽しませてもらいました。

泣かせる場面も台詞もあります

それまでカッコいいボンドの惚れ惚れし、ボンドとデルフィーヌの場面でキュンキュンし、コミカルな場面で大笑いして、事件の解決に爽快な気分でいたところ、最後には急に泣かせられてしまいました。

ル・シッフルのアジトからボンドとデルフィーヌが二人でパラシュートで飛び降りて、二人並んでパラシュートに座っているところで歌うデュエット曲の歌詞です。

「共に過ごした短くも濃い時間を決して忘れない」というような歌詞を聞いた時に、思わず涙が溢れてきてしまいました。
「え~、これはヤバい」って。

そして、それまでコメディ担当だったゲオルギー・ロマノフ大公役のすっしーさん(寿つかさ)が二人の息子たちに言う台詞が、退団する組長として組子たちに贈る言葉と重なって、ここでもウルっときました。

お話の最後にデルフィーヌを送り出したボンドのゆりかちゃんが銀橋を渡りながら歌う歌詞もグッときます。
曲の最後に言う「アデュー」にも胸が熱くなりました。

あ、そういえば同じ小池先生作の春野寿美礼さんの退団公演『アデュー・マルセイユ』でも最後「アデュー」の一言で終わったな~とふと思い出しました。

フィナーレがまた泣かせます

フィナーレの冒頭はキキちゃん(芹香斗亜)の歌唱指導から始まりますが、これがなぜか例のイルカの歌でした。

なんで?と思いましたが、さすがキキちゃん、お芝居では見られなかったキラッキラの笑顔で素晴らしい歌唱力で聴かせてくれました。
次のトップへの準備はバッチリという感じです。

そしてロケットダンス、ゆりかちゃんを中心に娘役たちとのダンスと続いた後、男役の群舞になります。
これがKAORIalive先生の振付ですが、めちゃくちゃカッコよかったです。
ここでもゆりかちゃんの男役の集大成が見られました。

退団するすっしーさん(寿つかさ)がピックアップされて真ん中で颯爽と踊るシーンもありました。

キキちゃんとアイコンタクトして「後は任せたよ!」という感じで袖にはけていったところでは一際大きな拍手が…
ここでも泣かされました。

その後のトップコンビのデュエットダンス。

真っ白なお揃いの衣装が本当に美しくて、振付も素晴らしくて。
長い長い、二人の思いのこもったリフトも素晴らしかったです。

その後、なんとゆりかちゃんが一人残ってソロのダンスを踊りました。
これは珍しいですよね。
このダンスがまた泣かせます。

ひとしきり踊った後に舞台上と客席をぐるっと見渡した後、床に左手の手のひらを付けて愛おしそうにじっと見つめてから名残惜しそうに一本ずつ指を離していくという振りがあったんです。

ここもKAORIalive先生の振付ですが、本当に愛のある振付で、それを見てもやっぱり涙がこみ上げてきました。

サヨナラショーも楽しみです

いろいろな要素がサヨナラ仕様を思わせる公演でした。

確かに痛快な娯楽作品で笑いもたくさんというところは退団公演ぽくはないのかもしれません。
ですが、こんな退団公演もありだ思いました。
いやすごくいいと思います。

観終わった後で締めっぽくならずに、晴れ晴れとした気分で劇場を後にできるのが、ゆりかちゃんとじゅんはなちゃんの最後らしいなという気がしました。

さて、宝塚大劇場公演は17日に千秋楽を迎えます。

前楽からサヨナラショーが行われますが、どんなサヨナラショーになるのかすごく楽しみです。
千秋楽の回はライブ中継とライブ配信も行われるます。

きっと多くの人が観られると思うので、感想を楽しみにしています。

  

読んで頂き、ありがとうございました。

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